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先日、自宅の庭で育てているブドウの木の剪定をしました。
今回は枝を短く、強めの剪定。新芽の数を少なくしました。
フランスでワインの守り神として知られるサン・ヴァンサンのエピソードに剪定の話があります。
曰く、彼のロバがブドウの新芽をほとんど食べてしまったが、
残ったわずかな芽から優れたブドウが実り、その年のワインは素晴らしい出来になった、という話。
このサン・ヴァンサンの命日とされる1月21日頃が剪定に適していると言われています。(私は1月19日に行いました)
さて、優れた果実が収穫できれば良いワインが出来るのは自明の理ですが、
ブドウの果実そのものと、発酵後のワインの味はだいぶ異なりますよね。
なぜこうも風味が変わるのでしょうか?
今回はワインの風味と、それを引き立てるグラスについてご説明します。
ワインの風味の違いはなぜ起きる?
ブドウ果汁が自然発酵することでエタノールや有機酸など様々な物質が生成され、
複雑な味わいがワインに表現されます。
ブドウには品種の特徴、その土地や生産年の特徴が含まれていて、
良いブドウほど多くのピースを含んでおり、その微妙な差がワインに大きな変化として現れます。
一例として、重厚なワインを作るブドウ品種の一つ、シラー。
多くは果実味に加えスパイシーな味が感じ取れます。
太陽をたっぷり浴びたものは、タンニンが強くなり完熟果実のアロマ、
反対に雨が多かった年ならタンニンは弱く、やや青い、ハーブや若々しい枝を想起させる香りが顕著です。
グラスの役割
このようなワインに隠れている味や香りを引き出し、どう美味しく飲むか、
と考えるのが最大の問題であり、楽しみの一つと言えるでしょう。
そのワインの秘密を引き出す最も重要な道具が、ワイングラスです。
グラスの種類は多種多様。その大きさや形状、高さは、デザイナーの綿密な計算・実験による機能美が隠されています。
例えば、ブルゴーニュの赤ワインなど華やかな香りの赤ワイン。
これは風船のように膨らんで、口元がすぼまった形状のグラスが適している、と言われていますが、
華やかな香りをグラス内に満たし、楽しむことができるようになっています。
重厚なボルドータイプの赤ワインは、
ブルゴーニュに比べて背が高く、大きな卵の殻のような形状が正解。
口径が大きくなるので、ワインが舌の中央へたっぷり導かれ、
豊富なタンニン、果実味、酸味といった重層的な味わいが
バランスよく口の中に広がっていき、まろやかなコクを十二分に堪能できます。
このように、ワインの特徴を踏まえてグラスを選ぶと、
ワインの微妙な差が際立ち、その特徴をより発見しやすくなるのですね。
グラスの歴史
かつてはグラスに味わい以外の機能が求められていた時代もありました。
シャンパン用のクープグラスは、今ではシャンパンタワーくらいでしか見られませんね。
この形状は空気に触れる面を広くし、シャンパンの泡を早く抜くためと言われています。
これは、当時の社交界ではゲップが今以上に白い目で見られた事と関連します。
また、背が低いクープグラスは、飲み干す時に顔を上に向ける必要がありません。
年配のご婦人が気にする首元を人目にさらさない、そんな配慮がこの形状に込められていた、とも言われています。
翻って、今ではシャンパン自体の美しい泡や繊細な味わい、香りを楽しむために、グラスはデザインされています。
因みに、私はワインの仕入れPROでも販売中の
ル・ヴァン・プロフェッショナルシリーズのヴィンテージシャンパン用を愛用しています。
ソムリエオススメワイン
ここで、グラスの扱いについてアドバイス。
ご自宅であれば、飲んだ夜にワイングラスを洗わないこと!
昔はちょっと飲んだくらいなら、大丈夫、と思っていたものです。
しかし、酔っ払いの手元を信用してはいけません。
私は、自戒を込めてルール化しております。
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エステート・ブラッシュ・ソーヴィニョン ミスティ・コーヴ
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白ブドウのソーヴィニョン・ブランに、ピノ・ノワールの赤ワインをブレンドして造った
新世界ならではのユニークな辛口ロゼ。
口当たり柔らかですがタンニンも僅かに感じられ、グラスの形状によって味の感じ方も変わります。