ワインの小話「思い出のワイン本」

ワインの小話「思い出のワイン本」

ワインの小話「思い出のワイン本」

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家の片づけに勤しむ最近の休日。
昔懐かしい品を目にすると思わず手が止まるので、一向に進みません。
特に若い頃何十回も読み返した本は感慨深いものがありますね。

今回のテーマは思い出。
私江畑の思い出の品をもとに、ワインの小話をご紹介します。




マイケル・ブロードベント氏の著作「プロのためのワインテイスティング」

2020年3月に逝去されたワイン評論家マイケル・ブロードベント氏の著作「プロのためのワインテイスティング」。
クリスティーズのオークショニアとして多くのヴィンテージワインに触れた経験に裏打ちされた名著です。

世界中のワインのヴィンテージについて触れており、
例えばボルドー赤は1771年~1991年、ソーテルヌは1747年~1990年、ブルゴーニュ赤は1860年~1990年。

最も古いものはポートワインでなんと1700年~1990年!
こんなに幅広く批評できた人は、最初で最後かもしれませんね。

氏が来日した時、私は運良くこの本に直筆サインしてもらう事ができました。
この本が出た1996年頃はまだワインに関する本格的な書籍も少なく、
私はこの本でテイスティングについて多くを学びました。

シャトー・ムートン・ロートシルト ラベル原画集

次は「シャトー・ムートン・ロートシルト ラベル原画集」。
こちらも当主バロンヌ・フィリピーヌさんの直筆サイン入りの宝物です。

1945年~1979年のムートンのラベルになった絵が掲載されています。
1970年のシャガール、1973年のピカソ…最後の1979年は日本人画家の堂本尚郎氏の作。

だいぶ前ですが、堂本さんの甥っ子と偶然お会いことがあります。
私がワイン関係の仕事に就いていると知ると、彼は

実は叔父さんが画家で、ワイナリーからラベルを描いてくれ、と依頼されたことがあってね。
高級ワインのラベルというから、さぞいい値で売れたでしょうね、と言ったら
現物支給だったから一銭にもならない、と笑って返されたよ。

と話してくれました。

最初、高名な堂本さんとムートンの話とは夢にも思わず、
ずいぶんケチなワイナリーだね、なんて笑っていましたが、
「ひさおじさん」と彼が呼ぶので、どうも気になる。
フルネームを尋ねると…果たして堂本尚郎氏でした、ああ、なんと恐れ多い!

思い出のワイン

本ほど長持ちはしませんが、何本かワインも出てきました。
古いラベルにはストーリーがあり、ワイン1本で1時間は話せるかもしれません。

例えば、1979年のラ・ロマネ。
ロマネ・コンティに比肩すると言われる、フランス最小の特級畑のワインです。
当時のブシャール社ラベルは、今のリジェ・ベレール社のものと異なるので、現在ほとんど見かけません。

1985年のドイツ、ラインガウの最高級デザートワイン、トロッケンベーレンアウスレーゼアイスワイン。
トロッケンベーレンアウスレーゼはいわゆる貴腐ワイン。
一方アイスワインは氷点下で凍結した果実から造る蜜のような甘口ワイン。
今の法律では別々の商品として登録しますので、この記載ワインが造られることは二度とないでしょう。

美味しいうちにすぐ飲むべきワインもあれば、長い年月と共に味わいも、ストーリーも深まり、価値を増すワインもあり、興味深いですね。

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